2009年06月25日

◆ うたのおくりもの

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るんるん イベント マティアス・ゲルネ & ピエール=ロラン・エマール

◆ Alban Berg
◆ 《 Vier Lieder 》 für eine Singstimme mit Klavier op. 2

■ Christian Friedrich Hebbel
■ Schlafen, Schlafen, nichts als Schlafen!

Schlafen, Schlafen, nichts als Schlafen!
Kein Erwachen, keinen Traum!
Jener Wehen, die mich trafen,
Leisestes Erinnern kaum,
Daß ich, wenn des Lebens Fülle
Niederklingt in meine Ruh,
Nur noch tiefer mich verhülle,
Fester zu die Augen tu!

■ Alfred Mombert
■ Schlafend trägt man mich

Schlafend trägt man mich
in mein Heimatland!
Ferne komm ich her,
über Gipfel, über Schlünde,
über ein dunkles Meer
in mein Heimatland.

■ Alfred Mombert
■ Nun ich der Riesen Stärksten überwand

Nun ich der Riesen Stärksten überwand,
Mich aus dem dunkelsten Land heimfand
an einer weißen Märchenhand.

Hallen schwer die Glocken.
Und ich wanke durch die Straßen
schlafbefangen.

■ Alfred Mombert
■ Warm die Lüfte, es sprießt Gras auf sonnigen Wiesen

Warm die Lüfte,
es sprießt Gras auf sonnigen Wiesen.
Horch!
Horch, es flötet die Nachtigall...
Ich will singen:

Droben hoch im düstern Bergforst,
es schmilzt und sickert kalter Schnee,
ein Mädchen im grauen Kleide
lehnt am feuchten Eichstamm,
krank sind ihre zarten Wangen,
die grauen Augen fiebern
durch Düsterriesenstämme.
»Er kommt noch nicht. Er läßt mich warten«...

Stirb!
Der Eine stirbt, daneben der Andere lebt:
Das macht die Welt so tiefschön.


喫茶店 YouTube Alban Berg Sonata op. 1 played by Alfred Brendel (1)
喫茶店 YouTube Alban Berg Sonata op. 1 played by Alfred Brendel (2)


◆ Robert Alexander Schumann
◆ 《 Frauenliebe und Leben 》 Op. 42
Frauenliebe und Leben ─ The Lied and Art Song Texts Page

喫茶店 YouTube Janet Baker: Frauenliebe (Schumann) - Barenboim

 T. <あの人に会ってから>

  あの人にあってから
  わたしは盲になったのだと思う
  わたしが眼をむけただけでも
  あの人だけが目につく
  目の覚めた夢のなかにいるように
  あの人の姿が わたしの前にちらつき
  深い暗闇から 明るく
  ただ明るく浮かびあがってくる。

  あの人のいないところでは
  わたしの周囲のすべてが光もなく 色も褪せている
  姉妹たちと遊びたいとも
  少しも思わない
  小さな部屋で静かに
  泣いているほうがいい
  あの人に会ってから
  わたしは盲になったのだと思う。


 U. <誰にもまさる君>
 V. <私にはわからない>
 W. <この指につけた指輪よ>
 X. <妹たちよ、手をかして>
 Y. <やさしい君よ、いぶかりの目で>
 Z. <胸に抱いて>

 [. <初めての悩みを>

  いまやあなたは私に初めて
  深い悲しみを与えた
  あなたは眠っている
  冷たいひどい人 死の眠りに
  残された人は 自分のまえを見つめてはいるけれど
  世界は空虚で 空しい
  私は愛し 生きていた
  けれど私はもう生きていない
  私は自分の内面に 静かに
  閉じこもり、ヴェールをおろす
  そのなかに 私はあなたを抱き、失われた幸せを求めましょう
  あなたは 私の全世界なのです


 ── マイケル・ジャクソンの死を悼んで・・・

Michael Jackson Videos ─ Yahoo! Music

いす YouTube Michael Jackson - Heal The World
いす YouTube Michael Jackson - Earth Song

 
◆ Robert Alexander Schumann
Liederkreis Op. 39 ( Schumann ) ─ Wikisource
◆ ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ Joseph von Eichendorff

 T. <異郷にて>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkeis, Op. 39 "In der Fremde "

  紅い稲妻の陰に、故郷の方から
  雲が流れてきている。
  けれど父も母も死んで長く、
  そこで僕を知る人はもう誰もいない。

  すぐに、ああもうすぐに静かな時がやって来る、
  その時には僕は安らぎ、僕の上では
  美しく人気のない森が葉擦れの音を立て、
  そしてここでも、もう僕を知る人はいなくなる。


 U. <間奏曲>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op. 39 "Intermezzo"

  あなたの姿を、とっても幸せな気持ちで
  僕は心の底にしまっている。
  そのあなたは、とってもいきいきと楽しげに
  いつも僕を見つめていてくれる。

  僕の心は、静かに自分へ
  ある古いきれいな歌を歌う。
  それは空気の中に舞いあがっていって、
  あなたのもとへと駆けつける。


 V. <森の語らい>
プレゼント YouTube Matthis Goerne - Liederkreis ,OP 39 " Waldgespräch "

  もう暗くなり、冷えてきたというのに、
  なぜひとりで森の中を馬に乗って走っているのですか、
  森は深く、あなたはひとりぼっち、
  美しい花嫁よ! 僕が家へ送ってあげよう!

  「男性は嘘や悪巧みが達者なもの、
  苦しみでわたしの心は張り裂けてしまいました。
  角笛はあちこちにさ迷うものでしょう、
  お行きなさい! あなたはわたしが何者か知らないのです。」

  馬も女もこんなに豪華に飾られ、
  若々しい体はなんて美しいことか、
  そうか、わかったぞ ── 神よ、護り給え!
  あなたは魔女、ローレライだな。

  「わかったようね。── 高い岩山から
  わたしの城はライン川をじっと深く見下ろしている。
  もう暗くなり、冷えてきたが、
  お前はもはやこの森から決して出られない!」


 W. <静けさ>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op 39 " Die Stille "

  誰も知らない、誰にもわからない、
  僕がどれだけ、どれだけ幸せか!
  ああ、ただひとりだけ、ただひとりだけに知って欲しい、
  そのほかには 誰にも知られてなるものか。

  雪の降る外もこれほど静かではない、
  天空の星たちも
  これほど口をつぐんで黙りこくってはいない、
  僕の想いほどには。

  僕は願う、僕が小鳥で
  海を越えていけたらと、
  きっと海を越えても更に、
  天高くまで飛んでいくだろう!

  誰も知らない、誰にもわからない、
  僕がどれだけ、どれだけ幸せか!
  ああ、ただひとりだけ、ただひとりだけに知って欲しい、
  そのほかには 誰にも知られてなるものか。


 X. <月の夜>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op 39 Mondnacht

  それは、まるで大空がそっと、
  大地に口づけでもしているかのようだった。
  まるで大地が花たちのほのかな光の中で
  大空のことだけを夢見ずにはいられないほどに!

  そよ風が野に吹き渡り、
  やわらかに穂が揺れ、
  森はかすかなざわめきの音を立てていた、
  星の明るい夜だった。

  そして僕の心は
  その翼を広げ、
  静かな大地へと飛び立っていった、
  まるで我が家に帰ってでも行くかのように。


 Y. <美しき異郷>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op 39 " Schöne Fremde "

  ざわざわと梢が音を立て、身をふるわせる、
  ちょうどこの時、
  半ば埋もれた城壁のまわりを
  古き神々がめぐっているかのようだ。

  ここ、ミルテの木の下、
  ひっそりとたそがれていく美しい色彩の中で、
  まるで夢の中のようにとりとめもなく、何を、僕に
  ささやいているんだい?夢のような夜よ。

  僕の頭上ではすべての星々が輝いている、
  燃えるような愛の眼差しで。
  その遠さが、まるで酔ったように語るんだ、
  やがて来る、大きな幸せのことを。


 Z. <城の上にて>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op 39 " Auf Einer Burg "

  上では年老いた兵士が
  見張り中に眠りについている。
  その上ににわか雨が降ってゆき、
  格子越しには森がざわめいている。

  髭も髪も伸び、
  胸もひだ飾りも石と化し、
  彼は何百年も座っている、
  高い静かな庵の中に。

  外は静かで穏やか、
  みな谷へと下りていった。
  むなしい窓のアーチでは
  森の小鳥たちが寂しく歌っている。

  婚礼の一行がその下を
  陽の光の中、ライン川を行く。
  楽隊は陽気に音楽を奏で、
  そして 美しい花嫁は涙を流す。


 [. <異郷にて>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op 39 " In der Fremde "

  小川のせせらぎが聞こえる
  森のいたるところから
  森の中、せせらぎに包まれながらも、
  僕は自分がどこにいるのか わからないでいる。

  ナイチンゲールがさえずっている
  ここで寂しく
  まるで古く美しい時代について
  何かを語りたがっているかのように。

  ほのかな月の光がただよい、
  まるで谷にあるあの城が
  僕の足元にあるように見える、
  けれど城はここからはすごく遠いんだ!

  きっとその苑生は
  白や赤のバラで一杯で、
  僕の恋人も僕のことを待っているだろう。
  けれど彼女はずっと前に死んでしまったんだ。


 \. <憂愁>
プレゼント YouTube Matthias Goerne - Liederkreis, Op 39 " Wehmut "
 ]. <黄昏>
プレゼント YouTube Matthias Goerne Liederkreis,Op 39 " Zwietlich "
 XI. <森にて>

 XII. <春の夜>

  庭の上の空高くを
  渡り鳥が飛んで行くのが聞こえた。
  それは春の訪れを告げていた。
  下ではもう花が咲き始めている。

  僕は叫びたかった、泣きたかった、
  こんなあり得ないことが起るなんて!
  古い奇跡が再び差し込んでくる、
  月の光とともに。

  そして月と星は語っている、
  夢の中では森がざわめいている、
  ナイチンゲールも歌っている、
  あの人はあなたのもの、あの人はあなたのものと!


Schumann  Etudes symphoniques & Carnaval.jpeg
 喫茶店 YouTube Pierre-Laurent Aimard: Bach

 喫茶店 YouTube Mozart Concerto No. 10 for Two Pianos

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◆ Franz Schubert 《 Winterreise 》 D 911
◆ Matthias Goerne :baritone
◆ Alfred Brendel:piano

本 Winterreise ─ Wikisource

プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 1

 1. Gute Nacht (Fremd bin ich eingezogen) D 911,1 d-Moll

    おやすみ

 余所者として、ここへ来た
 去ってゆく今も、やはり余所者だ
 来たときは、五月が優しかった
 とりどりの花束を贈ってくれた
 あの子は僕を愛していると言ったし
 あの子の母さんは、結婚さえ口にした
 でも今、この世は、暗く沈んでいる
 路も、雪にふさがれている

 もう、逃げ出すみたいに
 旅立たなければ
 真っ暗闇のなかを
 路をひとりで探さなければ
 月の光に浮かぶ影法師だけが
 一緒に来てくれる
 一面の雪野原に
 獣道をたどってゆかなければ

 これ以上ここにいられるか
 皆が僕を追い立てているのに
 犬たちだって 飼い主の前で
 猛り狂って吠えている
 次から次へ誰かほかの人へと
 愛はうつろうもの
 神がそうお決めになったのさ
 いとしい人よ、おやすみ

 君の夢を破らないように
 君の眠りを妨げないように
 僕の足音が君に聞こえないように
 そっと、そうっと、扉を閉め
 行きしなに、家の門に
 「おやすみ」と書いてゆくから
 君が起きたとき
 君への僕の想いが見えるように


 2. Die Wetterfahne (Der Wind spielt mit der Wetterfahne) D 911,2 a-Moll

     風 見 鶏

 風に吹かれて風見鶏がくるくる舞う
 かわいいあの子の家の屋根の上で
 僕の気がおかしくなってしまったのか
 まるで口笛吹いて僕を追い立てるようだ

 彼はもっと早く気づくべきだった
 これみよがしなご立派な風見鶏に
 そうすればこの家に
 女性の鑑など求めやしなかった

 風で人の気持ちまでくるくる舞う
 屋根のような騒がしい音がしないだけ
 あの家の人たちが僕の痛みに気づくものか
 なにせお嬢さんはもう、玉の輿


 3. Gefror’ne Thränen (Gefror’ne Tropfen fallen) D 911,3 f-Moll

     凍った涙

 冷たく固まった雫が
 頬をかすめて落ちる
 なんだ、今のは
 僕は泣いていたのか?

 おい、涙、僕の涙は
 もう、生温いのか
 ひんやりした朝露のように
 凍えて氷になってしまうなんて

 胸から噴き出たときは
 真っ赤に熱くなっていたのに
 この冬じゅうの氷を
 溶かしつくしそうなほどに


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 2

 4. Erstarrung (Ich such’ im Schnee vergebens) D 911,4 c-Moll

     凍てつく野

 雪のなかに空しく
 彼女の足跡を探す
 彼女が僕の腕にすがり
 緑の野を歩き回った跡を

 この雪野原に口づけし
 氷も雪も熱い涙で
 融かし去ってしまいたい
 黒い土が見えるまで

 どこに花はあるのだろう
 どこに緑の草はあるのだろう?
 花々は死に絶え
 草も枯れ果てた

 思い出のひとつも
 ここからは取り出せないのか?
 僕の苦しみが沈黙してしまえば
 誰も彼女のことを語ってはくれないのか?

 僕の心は死んだように冷たい
 そこに彼女の面影が凍りついたまま
 いつかこの心が溶け出したら
 彼女の面影も流れ去ってしまうだろう

 
 5. Der Lindenbaum (Am Brunnen vor dem Thore) D 911,5 E-Dur

     菩 提 樹

 泉のほとり、街の門の前
 一本の菩提樹が立っている
 その木陰にたたずみ
 いつも甘い夢にひたった

 木の皮にいくつも
 愛の言葉を刻んだ
 嬉しくても悲しくても
 木の下に来ていた

 旅立たねばならない今日も
 木の下を通る
 真っ暗な真夜中なのに
 目をつむった

 すると枝がざわざわした
 僕に呼びかけるように
 「おいで、ここへ、君、
 ここなら安らげるのに」

 冷たい風が真っ向から
 僕の顔面に吹きつけ
 帽子を吹き飛ばしたが
 僕は振り向きもしなかった

 もう何時間も
 あそこから歩いて来たのに
 囁きが耳に残っている
 「君はあそこでこそ、安らげるのに!」 と


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 3

 6. Wasserfluth (Manche Thrän’ aus meinen Augen) D 911,6 e-Moll

     溢れ流れる水

 涙がいく粒も僕の目から
 雪に零れ落ち
 冷たい雪のかけらが餓(かつ)えたように
 この熱い悲しみを吸い込む!

 緑が芽を出してくれれば
 ほのかに温かい風も吹いて
 氷はばらばらにひび割れ
 ゆるんだ雪も解けて消えてしまう

 雪よ、お前は僕の想いを知っているだろう
 言ってくれ、お前はどこへ流れてゆくの?
 僕の涙についてゆけばいい
 すぐに小川と一緒になれるから

 小川とともに町を通り抜け
 にぎやかな通りを行ったり来たりして ──
 熱くたぎる僕の涙を感じたら
 そこに僕の恋人の家があるんだ

 
 7. Auf dem Flusse (Der du so lustig rauschtest) D 911,7 e-Moll

     川の上で

 あれほど楽しげな音をたて
 いきいきと煌めいていた流れなのに
 なんと静まり返ってしまったことか
 別れの挨拶すら無く

 凍てついた皮に
 お前は覆われ
 冷たく身じろぎもせず
 砂岸の間に横たわる

 その氷の覆いに
 尖った石で
 恋人の名前と
 日付、時を刻み込もう

 初めて声を交わした日と
 僕が立ち去ったあの日を
 名前と日付のまわりは
 きれぎれの輪で囲もう

 僕の心よ、この川に
 お前は自分の面影を見ていないか? ──
 あの氷の下の流れも
 水かさが増して荒れていないか?


 8. Rückblick (Es brennt mir unter beiden Sohlen) D 911,8 g-Moll

     振り返り

 焼け付くように足の裏が熱い
 氷と雪の上を歩いているのに
 町の塔が見えなくなるまで
 少しも休みたくはない

 石に蹴躓きながらも
 早く町を離れたかった
 屋根からカラスたちが雪や霰の球を
 帽子めがけてぶつけてくる

 初めに迎えてくれた時はまるで違ったのに
 なんと移り気な町なんだ
 町の家々のきれいな窓に
 雲雀とナイチンゲールが鳴き競っていた

 菩提樹がこんもりと花開かせ
 清らかなせせらぎが流れ
 そして、ああ、少女の瞳がきらきらしていた
 それなのに駄目になってしまったね

 あの日のことを思い浮かべると
 もう一度振り返りたくなる
 おずおずと戻って行って
 あの娘の家の前にそっと立ってみたい


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 4

 9. Irrlicht (In die tiefsten Felsengründe) D 911,9 h-Moll

     鬼 火

 岩山の深い裂け目へと
 鬼火が僕を誘う
 どうやって出口を探すか
 そんなことはどうでもいい

 彷徨うことに慣れてしまったし
 どんな道でも目的地に行き着くさ
 われわれの喜びも、われわれの苦しみも
 すべては鬼火の戯れだ

 涸れた谷川の跡をたどって
 うねうねとゆっくり回って降りよう
 どんな川も海に達するように
 どんな苦しみもその墓にたどり着く


10. Rast (Nun merk’ ich erst, wie müd’ ich bin) D 911,10 c-Moll

     休 み

 今、体を横たえて
 初めて、疲れていることに気づいた
 険しい道でも
 歩きさえしていれば元気だったから

 僕の脚は休もうとしなかったし
 立ち止まると寒くてかなわなかった
 背中の荷物も重くなったし
 追い風が僕を前に飛ばしてくれた

 狭苦しい炭焼き小屋に
 寝場所を見つけだした
 けれど、手足が休まることはなく
 傷がずきずきする

 ああ、僕の心よ、戦いと嵐のなかでは
 あれほど奮い立っていたのに
 静かになったら 塞ぎの虫が
 熱くうずくのを感じるのだ


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 5

11. Frühlingstraum (Ich träumte von bunten Blumen) D 911,11 A-Dur

     春 の 夢

 色とりどりの花の夢を見た
 五月に咲き誇っているような
 緑なす野の夢を見た
 鳥たちが賑やかにさえずるような

 だが雄鶏が時がつくり
 目が覚めてしまった
 あたりは冷たく、薄暗く
 屋根から鴉の叫び声がした

 それにしても、あの窓ガラスに
 誰が木の葉を描いたのだろう?
 きっと夢見た者を嘲笑っているのだろう
 冬のさなかに花を見た者を?

 愛ひとすじの夢を見た
 可愛い娘の
 抱擁と口づけの
 歓喜と至福の

 だが雄鶏が時をつくり
 心が覚めてしまった
 今、ここに独りで座り
 夢の跡を追う

 もう一度目を閉じる
 まだ胸が温かく高鳴っている
 いつ窓の木の葉は緑に染まるのか
 いつ僕はあの子を腕に抱きしめるのか?

 
プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 6

12. Einsamkeit (Wie eine trübe Wolke) D 911,12 h-Moll

     孤 独

 澱んだ風が
 樅の梢を揺らすとき
 一片の暗い雲が
 澄みわたった空を漂うように

 ぐったりした脚を引きずって
 自分の道をたどる
 明るく楽しげな人々のなかを
 独りっきりで、声を交わすこともなく

 ああ! なんと安らかな大気
 ああ! なんと明るい世界!
 吹きすさぶ嵐のなかでも
 こんなには惨めでなかったのに


13. Die Post (Von der Straße her ein Posthorn klingt) D 911,13 Es-Dur

     郵 便 馬 車

 通り道から郵便馬車のラッパが響いてくる
 なぜだ、こんなにワクワクするのは
 僕の心よ?

 手紙なんておまえに来るはずはないのに
 なぜだ、こんなに胸苦しくなって
 僕の心よ?

 そうか、馬車はあの町から来たんだ
 僕に恋人がいた町から
 僕の心よ?

 一度あっちに行って
 どうなっているか訊きたいのだろ
 僕の心よ?


14. Der greise Kopf (Der Reif hat einen weißen Schein) D 911,14 c-Moll

     白 髪

 霜が真っ白に
 僕の髪を染めてしまった
 老人になったのかと思い
 嬉しくなった

 でもすぐに霜が融けて
 また黒い髪が出てきた
 自分の若さにぞっとする ──
 これでは柩に入るのはずっと先だ!

 夕焼けから夜明けまでに
 白髪になってしまう人もいるなんて
 信じられない? 実際僕はならないじゃないか
 こんな長旅をしているのに!


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 7

15. Die Krähe (Eine Krähe war mit mir) D 911,15 c-Moll

     カ ラ ス

 一羽のカラスが僕と一緒に
 町からついて来て
 今日までずっと
 頭上を回っている

 カラスよ、風変わりな奴め
 僕を見捨てないのか?
 そのうちここで僕を餌食にして
 この体をついばもうというわけか?

 いいよ、杖にすがる僕の旅も
 もうそんなに長くはないから
 カラスよ、最後まで見せてくれ
 墓までついてくる忠実ぶりを


16. Letzte Hoffnung (Hie und da ist an den Bäumen) D 911,16 Es-Dur

     最 後 の 希 み

 ちらほらと木々に
 色づいている葉も見える
 そんな木の下に立ち止まり
 よく物思いに耽る

 一枚の葉を見つめ
 希みを託す
 風が僕の葉を弄ぶから
 体の震えがとまらない

 ああ、その葉が地に堕ちた
 希みも消えた
 僕は崩れおれ
 希みの墓に泣き伏す


17. Im Dorfe (Es bellen die Hunde, es rasseln die Ketten) D 911,17 D-Dur

     村 で

 吠える犬、きしむ鎖の音
 村人らは眠りこけ
 欲深い夢を見て
 良くも悪くも元気を取り戻す

 朝になればすべて夢は消えている
 まあいい、とりあえず楽しんだのだから
 それでも果てしない夢を
 また枕の上で続けようとする

 僕に吠え続けろ、目覚めている犬よ
 皆がまどろんでいても、
  僕を眠らせるな!
 僕はもう夢を見尽くした
 眠りこける連中の所でなにをぐずぐずしているのか?


18. Der stürmische Morgen (Wie hat der Sturm zerrissen) D 911,18 d-Moll

     嵐 の 朝

 この嵐はなんていう破り方をするんだ
 空の灰色の服を
 ちぎれた雲があちこち
 ぶつかりながらふらついている

 真っ赤な炎が
 雲間を切り裂く
 これこそまさに朝
 僕の気持ちにぴったりだ

 僕の心は空に描かれた
 自分の姿を見つめている
 その姿こそまさに冬
 冷たく荒れ果てた冬だ


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 8

19. Täuschung (Ein Licht tanzt freundlich vor mir her) D 911,19 A-Dur

     惑 わ し ( Täuschung : 欺瞞、詐欺、錯覚、思い違い )

 ひとすじの光が楽しそうに踊りながら僕の前に
 あっちへこっちへ僕はそのあとを追い回した
 自分から行ったけど、気づいてたんだ
 旅人を誘い込む光だと
 ああ、僕みたいに惨めなやつは
 色とりどりのまやかしに引っかかってみたくなる
 氷と夜と恐怖の背後に
 明るく暖かな家と
 そのなかの愛らしい人を見せてくれるから ──
 惑わしだけが今の僕にはありがたいんだ


20. Der Wegweiser (Was vermeid’ ich denn die Wege) D 911,20 g-Moll

     道 し る べ

 なぜ僕は避けているのだろう
 ほかの旅人たちが行く道を
 どうして人目につかない雪に埋もれた
 岩山の小道を探しているのだろう?

 なにも悪いことをしていないのに
 人目を避けなくてもいいのに
 なぜ愚かにも
 荒野に向ってしまうのだろう?

 道しるべが街道に立っていて
 方々の町に通じる道を指している
 だが僕はあてどなく歩く
 休みもせずに、でも安らぎを求めて

 一本の道しるべが目の前に
 揺らぎもせず立っている
 この道を進まねばならない
 誰も帰ってきたことのないこの道を


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 9

21. Das Wirtshaus (Auf einen Todtenacker) D 911,21 F-Dur

     宿 屋

 ある墓地に
 僕の道はつながっていた
 ここにこそ泊まろうと
 僕は思いついた

 緑の弔いの花輪は
 疲れた旅人を
 ひんやりした宿屋に
 招いてくれるしるしに違いない

 なんとこの宿屋の部屋は
 すべて塞がっているというのか?
 もう崩れ落ちてしまいそうに
 疲れきって深く傷ついているのに

 なんと冷酷無比な宿屋なんだ
 そうか、僕を拒むのか
 それなら行こう、先へ進もう
 なあ、僕の忠実な杖よ


22. Muth! (Fliegt der Schnee mir in’s Gesicht) D 911,22 g-Moll

     勇 気

 雪が顔に降りつけてきたら
 払い落としてやろう
 僕の心がぶつくさ不平を言ったら
 明るく元気に歌い飛ばしてやろう

 心がなに言ったって聞くもんか
 聞く耳なんてない
 心がいくら嘆いたって知るもんか
 嘆くなんてくだらない

 陽気に世の中に入ってゆこう
 風雨にさからって
 この地上に神がいないなら
 われわれ自身が神になろう!


プレゼント YouTube Franz Schubert Winterreise D 911 part 10

23. Die Nebensonnen (Drei Sonnen sah ich am Himmel steh’n) D 911,23 A-Dur

     幻 の 太 陽

 三つの太陽が空に見えた
 長いあいだそれをじっと見つめた
 太陽もうつろに立ち止まっていた
 僕から離れたくないように
 ああ、お前たちは僕の太陽ではない
 ほかの人の顔を照らしてくれ!
 確かに僕にも三つの太陽があった
 今は最良の二つは沈んでしまった
 三つめも続いて沈んでくれたら
 闇のなかで安らげるのに


24. Der Leiermann (Drüben hinterm Dorfe) D 911,24 a-Moll

     辻 音 楽 師

 村のはずれに
 辻音楽師が立っている
 かじかんだ指で
 一心にライアーを回し鳴らしている

 裸足で氷の上を
 よろよろしながら
 ちっぽけな皿のなかは
 空っぽのままだ

 誰も聴こうともしない
 誰も見ようともしない
 犬だけが老人を囲い込んで
 唸り声をあげている

 老人はすべてに
 どこ吹く風
 ただただライアーの取っ手を回し
 鳴り止むことがない

 風変わりな老人よ
 お前と一緒に行こうか?
 僕の歌に合わせて
 お前のライアーを回してくれるかい?






Yours Musicaly 空っぽの皿 ♪♪


posted by 空っぽの皿 at 21:29| パリ 曇り| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お皿さん
毎日の記事をありがとうございます。

お誕生日おめでとう。
わたしも、一年一年の誕生日を、ありがたく生きています。



「友あり 近方よりきたる」    茨木のり子

友あり 近方よりきたる
まことに困ったことになった
ワインは雀の涙ほどしかないし
すてきなお菓子もゆうべでおしまい
果物をもぎに走る果樹園もうしろに控えてはいず
多忙にて
この部屋もうっすら埃がたまっている
まあ落ちついて 落ちついて
ひとの顔さえ見れば御馳走の心配をする
なぞは田舎風というものだ
いえ 田舎風などと言ってはいけない
その日暮しの根の浅さを不意に襲われた
これは単なる狼狽である
この時古風な絵のように
私の頭に浮んできた戸棚の中の桜桃の皿
ああ助った
あれは遠方の友より送られた
つややかな桜の木の実
一つ一つ含みながら
せめて言葉のシャンペンを抜こう
シャンペンとはどんなお酒か知らないが
勢のいいことはほぼたしか
明日までにどうしてもしなければならない
仕事なんて そんなに沢山あるもんじゃない
ほとほとと人の家の扉を叩き
訪ねてきてくれたこころの方が大切だ
沸騰するおしゃべりに酔っぱらい
ざくざくと撒き散らそう宝石のように結晶した話を
ひとの悪口は悪口らしく
凄惨に ずたずたに やってやれ
女ともだちの顫(ふる)える怒りはマッチの火伝いに貰うことにしよう
このひととき「光る話」を充満させるために
飾りを毟(むし)れ 飾りを毟れ
わが魂らしきものよ!
近方の友は
痛みと恥を隠さぬことによって
斬新なルポをさりげなく残してゆく
わたくしもまた
そしらぬ顔で ぺたりと貼りたい 彼女の心に
忘れられない話を二つ三つ
今はもうあまりはやらない旅行鞄のラベルのように

茨木のり子詩集『見えない配達夫』より


パリは遠いですが、毎日訪問できるから、近いですね。


阿蘇では、《はなしのぶ》などの山野草が見頃です。
http://yasuko.sakura.ne.jp/hyousi04/hanasinobu.html
http://www.asahi-net.or.jp/~CP7T-MRT/020621hanasinobu.html
Posted by 淡明 at 2009年06月26日 08:29
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